契約できません ケース3

「この土地、いくらになるかしら?」

とは、高齢の女性のお客様。

拝見するに、道路に面した農地です。

地目は田んぼ。

中途半端に広いので

「売るのに苦戦するかな?」

と考え名義を見ると、明らかに、相談に来られた方と別の名前。

それも名字すら違う。

次に本来の持ち主の所有した経緯は「相続」になっています。

時期はつい最近です。

「この持ち主の方とのご関係は?」

「甥です」

「この方から売却をご依頼されたんですか?」

「いえ、甥は東京にいるものですから、

九州の田んぼなど管理できないので売ってあげようと思いまして」

「そう本人が言っているのですか?」

「本人とは話をしていませんけど、売ってあげなきゃ困るので」

「人の財産を売り買いできません」

「でも困るんです!」

「すみません、お引き受けできませんのでお引き取りください」

数か月後…

「この間の土地、私のものになるので、売ってください」

と、以前のお客様。

「確認してからご連絡しますね」

ということで所有者に手紙を書きました。

数週間後いただいたお返事には、

「父から相続した土地ですが、

管理できないのでどうしようかと思っていました。

ただ、相続して間もないので今しばらく処分は考えてなかったのですが、

叔母より売れという連絡が頻繁にあり、

朝、昼、晩、時には夜中にまで電話され、もう疲れました。

心情的には好きにしてという状態です。

叔母に名義変更しますので後はお願いします」

と書かれていました。

(やばいな)

経緯に納得できない部分もあり、問題も多いのですが、

とりあえず一般媒介でお引き受けいたしました。

普通の宅地建物取引業者は、問題がある不動産については、

専属専任契約を結びません。

現地で看板を付けていると、

「あんたは何をしとるんだ?」と他業者の方。

なんでもその業者の方は、専属専任契約なのだそうです。

それではと、さっさと引き上げました。

 後日気になり、レインズというサイトを検索してみると…

(レインズというのは国土交通省の推進する不動産流通機構のことで、

宅地建物取引業者は専属専任契約の場合、

レインズに登録する義務があります)

あの女性の物件が何社も出ています。

これは専属選任契約では考えられないことなのです。

つまりあの女性は、

専属選任契約を何社にもわたって契約しているということになります。

当然これは契約違反ですが、関係がないので、そのままにしておきました。

数か月後、その女性がご来店されました。

「何社か頼んだけど、やっぱりここしかないので、売って欲しい」

「申し訳ないんですが、うちでは受け付けられません」

その女性、専属選任契約を結んだ各不動産会社とトラブルになり、

何社かでは暴れて警察沙汰になっているのです。

その瞬間でした、いきなり立ち上がり、

座っていた椅子を持ち上げカウンターめがけて振り下ろしました。

「あんたも私の邪魔をするんか?!!」

とても高齢者の、しかも女性の力とも思えず、

荒れ狂うのを避けながら110番に電話します。

やがて駆けつけた警察官がこの女性を取り押さえようとしますが、

警察官二人でも手に負えません。

すぐに応援が駆け付け警察官4人でやっと取り押さえました。

数日後、

お店の損害の賠償に来られたあの女性の息子さんからお聞きしたのですが、

女性はアルツハイマー病であったこと、

100万円するかしないかの土地にこだわり、

結果的に親族にも近隣にも迷惑をかけ、

損害賠償額だけで軽く500万円を超えたこと、

今は処置入院中であるが、

そのまま精神病専門の施設に入所するようになることなどを話されました。

最後に、

「これもお袋をほったらかしにした罰なんですね。

退職金がほとんどなくなってしまいました」

と告げて、お帰りになられました。

最初にこの女性について感じて違和感は、

アルツハイマーのそれだったのです。

宅地建物取引業者であり、介護資格を持つ立場として、

気が付かないのはどうかというご意見もあろうかと思いますが、

一般的に認知症に気が付くのは、かなり進行した症状がある場合で、

この女性のように初期のものは、

初対面ではなかなか気が付かないものです。

「暴れる高齢者」このケースに限らず、多数発生しています。

これを防ぐには、家族が常に接するしか方法はありません。

ちなみに、この女性が甥から脅し取った土地は、しっかり「負動産」となりました。

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